末期腎不全患者における運動のメリットと障壁とは?

こんにちは、腎リハラボへようこそ。理学療法士の優です。今回は、“末期腎不全患者における運動のメリットと障壁とは?”というテーマについて話していきたいと思います。運動は健常者だけではなく腎不全患者にも推奨されておりますが、臨床的には取り組めていないことも多く、介入の難しさを感じています。

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今回はコチラの流れに沿って進めていきたいと思います!

  1. 背景
  2. 方法
  3. 結果
  4. まとめ

1. 背景

末期腎不全患者の死亡率は高く、QOLは低い。

Yong DS, et, al. Symptom burden and quality of life in end-stage renal disease: A study of 179 patients on dialysis and palliative care. Palliat Med 23: 111–119, 2009 
Canadian Institutes for Health Research: CORR End-Stage Kidney Disease Tables and Figures: 2006 to 2015: Quick Stats. Available at: https://www.cihi.ca/en/quick-stats. 

透析導入直後に生じやすい身体機能障害によって、末期腎不全患者は1年あたり1.6-2.5回も転倒し、これは非透析患者と比較し股関節の骨折が4.4倍、死亡率が2.5倍高いことと関連している。

Kurella Tamura M, et al. Functional status of elderly adults before and after initiation of dialysis. N Engl J Med 361: 1539–1547, 2009 
Coco M, et al. Increased incidence of hip fractures in dialysis patients with low serum parathyroid hormone. Am J Kidney Dis 36: 1115–1121, 2000 
Maravic M, et al. Incidenceand risk factors for hip fractures in dialysis patients. Osteoporos Int 25: 159–165, 2014 
Lin JC, et al. Mortality and complications after hip fracture among elderly patients undergoing hemodialysis. BMC Nephrol 16: 100, 2015 

他の慢性疾患患者では、運動による身体活動量の増加はQOL、身体機能の改善および入院リスクの軽減と関連している。

Courneya KS, et al. Effects of aerobic and resistance exer- cise in breast cancer patients receiving adjuvant chemother- apy: A multicenter randomized controlled trial. J Clin Oncol 25: 4396–4404, 2007 
O’Connor CM, et al. HF-ACTION Investigators: Efficacy and safety of exercise training in patients with chronic heart failure: HF-ACTION randomized controlled trial. JAMA 301: 1439–1450, 2009  

運動が身体および精神に有益であるにも関わらず、末期腎不全患者は座りがちである。

Johansen KL, et al. Physical activity levels in patients on hemodialysis and healthy sedentary controls. Kidney Int 57: 2564–2570, 2000 

アメリカの血液透析患者に対する調査では、疲労や息切れなどいくつかの運動に対する障壁が確認されている。

Delgado C, Johansen KL. Barriers to exercise participation among dialysis patients. Nephrol Dial Transplant 27: 1152–1157, 2012 

血液透析患者は透析日に時間がなく、また運動する場所も不足しており、さらに運動施設および公共交通機関にかかるお金が運動の障壁になる。

Kontos PC, et al. Factors influencing exercise participation by older adults requiring chronic hemodialysis: A qualitative study. Int Urol Nephrol 39: 1303– 1311, 2007  

この研究では、透析患者における運動のメリットと障壁、および好ましい結果と運動プログラムが治療方法と年齢別に調査されました。

2. 方法

対象はHDもしくはPDを導入して3ヶ月以上経過した患者で、実際に423名が調査に参加されています。

3. 結果

全体のうち少なくとも10分以上、週3日以上歩いている患者は68%で、*中等度の身体活動がある患者は34%、高強度の身体活動がある患者は12%で、各腎代替療法間に有意差はありませんでした。

ただし、年代別に比較すると、65歳以上の高齢者と比較し、65歳未満の患者は、全体のうち週3日10分以上の歩行、中等度、高強度の活動の全てにおいて実施率が高い結果となりました。

運動は有益だと考えている患者は全体の74%、もし主治医に運動を勧められたら実施しようと考えている患者は全体の57%で、腎代替療法様式および年齢で比較すると、両者ともhomeHD患者および65歳未満により多い結果となりました。

運動により期待できる効果として、*おもに活力の向上および筋力の向上が挙げられました。

運動ができない理由として、疲労感および脆弱性が挙げられました。ちなみに運動に興味がないと回答した患者は全体のわずか8%でした。特にhomeHD患者の90%は運動ができない理由に脆弱性をあげており、これはHDおよびPD患者の50%よりかなり多い結果となっております。

好まれる運動場所として家が73%、近隣が33%、ジムが30%、透析施設は23%でした。好まれる運動プログラムとして、有酸素および筋トレの両者が41%で最も多い結果となりました。約半数の患者が将来的に運動に参加することに興味を持っていました。

4. まとめ

末期腎不全患者の運動参加における障壁として疲労感が第一に挙げられている。

Delgado C, Johansen KL: Barriers to exercise participation among dialysis patients. Nephrol Dial Transplant 27: 1152–1157, 2012 
Regolisti G, et al. Interaction of healthcare staff’s attitude with barriers to physical activity in hemodialysis patients: A quantitative assessment. PLoS One 13: e0196313, 2018

HD患者は透析中運動を行うことですでに忙しいスタッフに負担をかけることを心配し、スタッフも透析中運動の実用性について心配していた。また、HD患者は透析中運動の安全性に懸念を抱いており、運動していることを他患者やスタッフに見られたくないと感じていた。

Jhamb M, et al. Knowl- edge, barriers and facilitators of exercise in dialysis patients: A qualitative study of patients, staff and nephrologists. BMC Nephrol 17: 192, 2016 
Thompson S, Tonelli M, Klarenbach S, Molzahn A: A qualita- tive study to explore patient and staff perceptions of intradialytic exercise. Clin J Am Soc Nephrol 11: 1024–1033, 2016

透析中低強度運動の参加について、1/3は興味が無いと拒否した。

Chen JL, et al. Effect of intra-dialytic, low-intensity strength training on functional capacity in adult haemodialysis patients: A randomized pilot trial. Nephrol Dial Transplant 25: 1936–1943, 2010 

運動に対する患者の意欲向上に歩数計測や社会参加などが重要になるかもしれない。

Bravata DM, et al. Using pedometers to in- crease physical activity and improve health: A systematic review. JAMA 298: 2296–2304, 2007 
Zhang J,et al. Efficacy and causal mechanism of an online social media intervention to increase physical activity: Results of a randomized controlled trial. Prev Med Rep 2: 651–657, 2015 

有酸素運動と筋トレのコンビネーションは、運動に対する興味の低下を抑制し脱落率を低下させ、患者に最も求められている運動プログラムである。

Cho JH, et al. Effect of intradialytic exercise on daily physical activity and sleep quality in maintenance hemodialysis patients. Int Urol Nephrol 50: 745–754, 2018 

コチラの研究結果から、透析患者の大多数が運動は有用と信じていたが、参加にはいくつかの障壁が存在したことが明らかになりました。疲労感や衰弱により、運動プログラムは自宅や近隣での日常生活に組み込む必要が生じる可能性があります。そして、患者は運動の効果として疲労、衰弱、睡眠に関するQOLの改善に興味を持っており、これらは運動の参加率や維持率向上に関与する可能性があることが明らかになりました。

今回の内容は以上です、最後までご覧いただきありがとうございました!

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