透析患者におけるADL困難度は、年齢と歩行速度が関連している可能性がある

みなさんこんにちは、腎リハラボへようこそ。理学療法士の優です。今回は、歩行可能な透析患者におけるADLの困難さを予測する因子はあるか?というテーマについて話していきたいと思います。患者報告アウトカム(PRO)の重要性が認識されるにつれて、これらに関する調査は増えてきています。それでは始めていきましょう。

紹介する研究はコチラ!

” Determinants of difficulty in activities of daily living in ambulatory patients undergoing hemodialysis “

Watanabe, et al. Renal Replacement Therapy (2018) 4: 8

今回はこの流れに沿って進めていきたいと思います!

  1. 背景
  2. 方法
  3. 結果
  4. まとめ

1. 背景

日本では、半数以上の透析患者のADLが自立していると報告されている。

Jassal SV, et al. Functional Dependence and Mortality in the International Dialysis Outcomes and Practice Patterns Study (DOPPS). Am J Kidney Dis. 2016;67(2): 283–92

ADLが自立している透析患者でさえ多くはADLの困難さを抱えており、また、同年齢の対照群と比較しADLの困難さを抱えることが多いとの報告がある。

Kutner NG, Brogan DJ. Assisted survival, aging, and rehabilitation needs: comparison of older dialysis patients and age-matched peers. Arch Phys Med Rehabil. 1992;73(4):309–15

地域在住高齢者において、ADLの困難さが要介護や死亡の予測因子になることが

明らかになっている。

Hirvensalo M, et al. Mobility difficulties and physical activity as predictors of mortality and loss of independence in the community-living older population. J Am Geriatr Soc. 2000;48(5):493–8

しかし、透析患者におけるADLの困難さが生じる要因についてまだあまり調査されておりません。

この研究の目的は、症状の安定している歩行可能な透析患者における、ADLの困難さに関連する要因を明らかにすることとされています。

2. 方法

歩行可能な透析患者を対象に、ADL依存度を①FIM5項目で、ADL困難度を②HD患者移動動作評価表で、歩行能力を快適歩行速度でそれぞれ評価されています。

①FIM5項目

FIMのうち下肢機能に関連した「ベッド・トイレ・車椅子移乗」「トイレ移乗」「浴槽移乗」「歩行」「階段昇降」の5項目について、それぞれ1~7点で評価

②HD患者移動動作評価表

小澤哲也, 他. 維持血液透析患者の移動動作時の自覚的困難さに注目した疾患特異的移動動作評価表の開発 -運動療法の効果に対する反応性の検討ー. 透析会誌. 43(6): 515-522. 2010

3. 結果

FIM5項目で評価したADL依存度において52%が満点だった

HD患者移動動作評価表で評価したADL困難度について、満点はわずか4%だった

HD患者移動動作評価表で評価したADL困難度の各項目について、困難度3以下の患者の割合に基づき、①高難易度レベル、②中難易度レベル、③低難易度レベルに分類されました。

①高難易度レベル:「3階まで階段を昇る」「1km歩行」「600m歩行」「床から立ち上がる」

②中難易度レベル:「3階から階段を降りる」「300m歩行」「2階まで階段を昇る」「床へ座る」

③低難易度レベル:「20m早歩きする」「2階から降りる」「100m歩行」「椅子から立ち上がる」

HD患者移動動作評価表の各難易度レベルにおいて、共通して年齢、快適歩行速度に有意な関連がみられました。

高難易度、中難易度、低難易度の各レベルにおけるADL困難度を予測する歩行速度のカットオフ値はそれぞれ1.40m/s(分速83.7m)、1.26m/s(分速75.5m)、1.25m/s(分速75.1m)でした。

4. まとめ

この研究は、歩行速度と年齢がADL困難度に有意に関連することを明らかにしました。

FIMで評価化したADLが満点に近い集団の中にも自覚的な困難度で評価すると様々な患者が存在していることが分かりました。また歩行速度についても、ADL困難度という観点からみると1.0m/sよりもさらに高いカットオフ値が存在することも明らかとなり、一見ADL自立に見える患者についても詳細に評価することの重要性に気付かされました。

最後までご覧いただきありがとうございました!

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