高齢者のADLは透析導入後も維持されているか?

今回は、「高齢者のADLは透析導入後も維持されているか」というテーマについての論文を紹介したいと思います。ADLは高齢者にとって、特に透析患者においては重要な要素の一つです。しかし、高齢透析患者におけるADLについて明らかになっていないこともたくさんあります。この疑問について、これから一緒に学んでいきましょう!

紹介する論文はコチラ!

”Functional status of elderly adults before and after initiation of dialysis”

Tamura MK, et al. The new England journal of medicine. 361;16. October 15,2009

今回はこちらの流れに沿って進めていきたいと思います!

  1. 緒言
  2. 方法
  3. 結果
  4. 考察
  5. まとめ

1. 緒言

ADLはQOLに影響する重要な側面を持っており、生命予後の強力な予測因子であり、介護の必要性や健康維持にかかる費用の決定因子となり、経管栄養法や心肺蘇生法など医療の手順を決定する要因となる

Inouye SK, et al. Importance of functional measures in predicting mortality among older hospitalized patients. JAMA 1998;279:1187-93
Carey EC, et al. Development and validation of a functional morbidity index to predict mortality in community-dwelling elders. J Gen Intern Med 2004;19:1027-33
Gillick MR. Rethinking the role of tube feeding in patients with advanced dementia. N Engl J Med 2000;342:206-10
Fried TR, et al. Understanding the treatment preferences of seriously ill patients. N Engl J Med 2002;346:1061-6

しかし、透析移行期におけるADLの経過は明らかになっていません。そこで、こちらの研究の目的は、短期間および長期間における透析導入後のADL維持の頻度を評価し、また透析のADL変化への効果を推定することされています。

2. 方法

・ADL評価方法:MDS-ADLスコア

この指標は食事、更衣、排泄、整容、歩行、椅子からの立ち上がり、起居動作の7つの項目について、自立レベルの0から全介助の4まで5段階の点数をつけてADLを評価します。ADLが全て自立していれば0点、全ての項目が全介助であれば28点となります。

・ADLの変化は3か月ごとに測定され、ベースラインは透析導入前の最後の測定

・「2点以上の上昇」はADL低下、「1点以内の低下または変化がない状態」はADL維持

3. 結果

・透析開始3か月以内で、61%が死亡もしくはADLの低下

・透析開始12か月以内で、87%に死亡もしくはADLの低下が見られました。

・透析導入の3か月前からADL低下の加速が見られ、透析導入後も大幅なADLの低下が継続

4. 考察

透析導入により尿毒症症状を改善しているにも関わらず、なぜADLの低下が継続するのか?

  • 透析を導入する患者の機能低下有病率は高く、また多くの患者が合併症を有している
  • 腎機能低下というより、透析導入または他の原因による入院が影響している可能性がある
  • 尿毒症改善による利益より、透析治療の身体的リスクと精神的負担が大きい可能性がある
  • 腎不全は、ADL低下の主な原因というより終末期の多臓器不全を反映しており、透析導入はその必然の低下から患者を救うことが難しい可能性がある

ADL低下の予防および改善のためには

  • 透析の導入を待つよりも、苦痛を軽減しADL自立を維持することが、この重要な時期の患者には重要になるかもしれない
  • ほとんどのリハビリ施設や介護施設では透析治療ができないが、それらが透析設備を有することで、患者の負担を軽減し、リハビリへの参加を促すことができる可能性がある
  • セルフケアの促進や地域資源を活用した介入はADL低下を予防できる(地域在住高齢者で明らかになっているが、それらが末期腎不全患者に適用できるかどうかは調査されていない)

5. まとめ

・透析を導入する施設在住高齢者は高い死亡率に加え、実質的および継続的なADL低下を有する

いかがでしたでしょうか?今回は改めて慢性腎不全患者におけるADL維持の重要性と難しさについて考えさせられる内容でした。

最後までご覧いただき、ありがとうございました!

youtubeでも動画を公開しておりますので、是非ご覧ください!

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