こんにちは、腎リハラボへようこそ。理学療法士の優です。今回は、透析患者において入院期間の長さはADLの低下と関連するか?というテーマについて話していきたいと思います。
紹介する論文はコチラ!
” Length of hospital stay is associated with a decline in activities of daily living in hemodialysis patients “
Kamitani, et al. BMC Nephrology. 2020. 21:9
今回はこの流れに沿って進めていきます!
- 背景
- 方法
- 結果
- まとめ
1. 背景
透析患者において、機能障害は健常者と同様にQOLと生命予後の強力な予測因子となる。
1) Inouye SK, et al. Importance of functional measures in predicting mortality among older hospitalized patients. JAMA. 1998;279(15):1187–93
2) Jassal SV, et al. Functional dependence and mortality in the international Dialysis outcomes and practice patterns study (DOPPS). Am J Kidney Dis. 2016;67(2):283–92
末期腎不全患者について、機能障害の有病率は極めて高い。
3) Cook WL, Jassal SV. Functional dependencies among the elderly on hemodialysis. Kidney Int. 2008;73(11):1289–95
4) DeOreo PB. Hemodialysis patient-assessed functional health status predicts continued survival, hospitalization, and dialysis-attendance compliance. Am J Kidney Dis. 1997;30(2):204–12
30%以上の高齢者が入院中に新たに基本的ADLに介助を要する、もしくは介助量が増える
Boyd CM, et al. Recovery of activities of daily living in older adults after hospitalization for acute medical illness. J Am Geriatr Soc. 2008;56(12):2171–9
Boyd CM, et al. Functional decline and recovery of activities of daily living in hospitalized, disabled older women: the Women’s health and aging study I. J Am Geriatr Soc. 2009;57(10):1757–66
入院の回数が機能低下と関連する
Boyd CM, et al. Hospitalization and development of dependence in activities of daily living in a cohort of disabled older women: the Women’s health and aging study I. J Gerontol Ser A. 2005;60(7): 888–93
この論文の目的は、入院期間と入院回数がADL低下に関連するかを明らかにすることとされています。
2. 方法
J-DOPPS(the Japanese Dialysis Outcomes and Practice Patterns Study)のデータを用いて、基本的ADL(BADL)をKatz index、手段的ADL(IADL)をLawton indexで評価されました。また、入院は「2日以上病院に滞在すること」とされています。
3. 結果
対象は849人(平均年齢64.9歳、男性64.4%、糖尿病36.3%)、入院を経験した参加者は26.9%
平均入院期間は11日、基本的ADLが低下した患者は16.8%、手段的ADLが低下した患者は23.3%
最も低下が見られたのは基本的ADLでは「入浴」、手段的ADLでは「徒歩圏外への移動」
65歳未満患者において、
- 入院期間が1日増える毎の低下リスクは、BADLが1.013倍、IADLが1.017倍
- 入院回数が2度以上の患者は低下のリスクは、BADLが2.65倍、IADLが1.38倍
65歳以上の患者において、
- 入院期間が1日増える毎の低下リスクは、BADLが1.014倍、IADLが1.007倍
- 入院回数が2度以上の患者は低下のリスクは、BADLが2.04倍、IADLが1.32倍
4. まとめ
今回の結果は、入院期間の長さが透析患者の基本的および手段的ADL低下に重要な影響を及ぼすことを表しています。臨床的な視点からいうと、透析患者は効果的な疾病管理の確認のために頻回に病院を訪れるという理由から、入院回数を減らすという戦略は難しいと考えられ、合計の入院日数を減らしていくという方法が、より現実的な戦略となる可能があることも論文内で言及されています。
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