透析中運動療法は禁忌のない透析患者すべてに推奨される!

こんにちは、腎リハラボへようこそ。理学療法士の優です。今回は、透析中運動療法の詳細について話していきたいと思います。このトピックに関する報告も増えてきており、日本では医療保険下で実施できるようになりました。それでは始めていきましょう!

紹介するガイドラインはコチラ!

今回はこの流れに沿って進めていきたいと思います!

  1. ガイドラインの概要
  2. 透析中運動療法の推奨度
  3. 透析中運動療法が推奨される理由
  4. 透析中運動療法の詳細
  5. 透析中運動療法の除外基準および禁忌
  6. 安全のためのモニタリング
  7. まとめ

1. ガイドラインの概要

このガイドラインは、イギリスの透析室およびその関連に勤務する医師や看護師に向けて作成され、2009年版をアップデートしたものです。このガイドラインの目的は、「透析患者のケアや透析室の運営について、および一般的に達成されるべき目標についての情報を提供すること」となっています。

ガイドライン内にいくつかのステートメントがあり、それぞれに強さを表すグレードと背景にある先行研究の質が等級づけられています。グレード1は確信された推奨、2は賢明な提案、そして背景の先行研究の質についてはAからDで等級づけられておりAは良質なエビデンスがあり効果が確信されたもの、Dは専門家の意見のようなもの、となっています。

全8章から構成されており、最後に透析中運動療法についての記述があります。

2. 透析中運動療法の推奨度

  • 透析中の運動は、身体機能改善のために禁忌のないすべての透析患者に適用されるべき
  • 透析中の運動はQOLの改善のための方法の一つとして検討されるべき
  • 透析中の運動は適切な訓練を受けた職員によって実施されることが望ましい

3. 透析中運動療法が推奨される理由

透析患者はハイリスクな状態であるにもかかわらず、運動が観察された合計3万時間の中で運動に関連した有害事象発生についての報告はなく、運動遵守率は43-100%で、脱落者は15-50%であった。

Heiwe S, et al. Exercise training for adults with chronic kidney disease. Cochrane Database Syst Rev. 2011; 10):CD003236
Smart N, et al. Exercise training in haemodialysis patients: a systematic review and meta-analysis. Nephrology (Carlton). 2011;16(7):626–32

2-6か月の運動処方によって、運動種類や頻度、強度に関わらず、平均で最大酸素摂取量5ml/kg/minの心肺機能向上という臨床的に中等度から高い改善が見られた。

Segura-Orti E. Exercise in haemodyalisis patients: a literature systematic review. Nefrologia. 2010;30(2):236–24
Smart N, et al. Exercise training in haemodialysis patients: a systematic review and meta-analysis. Nephrology (Carlton). 2011;16(7):626–32

どんな透析中の運動を処方された患者であっても、それにより中等度の筋力の向上という臨床的に重要な改善が見られた。

Segura-Orti E. Exercise in haemodyalisis patients: a literature systematic review. Nefrologia. 2010;30(2):236–24
Heiwe S, et al. Exercise training in adults with CKD: a systematic review and meta-analysis. Am J Kidney Dis. 2014;64(3):383–93

あらゆる種類の運動は、立ち上がりや歩行などの身体能力に関して一貫して臨床的に有意な大きい改善をもたらした。

Sheng K, et al. Intradialytic exercise in hemodialysis patients: a systematic review and meta-analysis. Am J Nephrol. 2014;40(5):478–90

主観的身体機能は運動した患者で有意な向上が見られた。これはしばしばQOLの向上に関連し、こうした理由でいくつかの先行研究は運動がQOLの向上に関与すると結論付けている。

Sheng K, et al. Intradialytic exercise in hemodialysis patients: a systematic review and meta-analysis. Am J Nephrol. 2014;40(5):478–90

4. 透析中運動療法の詳細

  • 運動は適切な訓練を受けた職員( 理学療法士、スポーツ科学者、心臓リハビリテーションの専門家または、これらの職種より指導を受けた理学療法助手、栄養士、看護師 )により運動実施の順守と効率性のために監視されるべき
  • 運動は透析開始30分から2時間の間に行われるべき
  • 運動は禁忌のない限りすべての透析実施日で行われるべき
  • 運動はシャント部位を考慮しながら全身の有酸素運動及び筋力トレーニングを行うべき
  • 運動前にウォーミングアップを行う必要がある(少なくとも5分はかけて半分まで運動強度を上げていく)
  • 運動は少なくとも30分は続けて行われるべき
  • 運動は中強度から高強度で実施されるべき(運動負荷試験が実施できた場合は最大酸素摂取量もしくは最大心拍数の40-75%が良く、実施できなかった場合や筋力トレーニングに関しては、ボルグスケールの12-15が良い)
  • 望ましい目標に達するまで運動量は期間や頻度、強度を徐々に上げていくべき
  • 運動にはクールダウンが含まれるべき(少なくとも5分をかけて、メインの運動強度の半分程度から始め終了まで徐々に強度を下げていく)
  • 透析中の運動が開始された患者は、非透析日にさらなる運動を行うことを推奨されるべき
  • 運動初心者の参加と運動遵守率を強化するために、運動は中強度で処方されるべき
  • 運動習慣を維持するために、社会的サポートや目標設定、動機づけのための声掛けなどの行動変容を考慮した方法が行われるべき

5. 透析中運動療法の除外基準および禁忌

  • 透析導入3か月以内、炎症や発熱など不安定な状態、8週間以内の心筋梗塞または未診断の胸痛
  • アメリカ心臓協会とアメリカスポーツ医学会の共同声明によるクラスDの不安定な状態の患者(不安定な虚血症、代償されていない心不全、重度で症候性の大動脈弁狭窄症、肥大性心筋膜症もしくは最近の心筋炎による心筋症、重度な肺高血圧症、その他運動によって悪化する可能性のある状態(安静時血圧200の110以上、活動性の心筋炎や心膜炎もしくはその疑い、血栓性静脈炎および全身や肺の塞栓症))
  • 症候性の高血圧もしくは低血圧、深部静脈血栓症の徴候や症状、そして体液貯留の指標に重大な影響を与えるほどの透析間の過剰な体重増加(例:血圧160/100以上、心拍数100以上、安静時の息切れ、実質的な末梢浮腫の徴候など)
  • 糖尿病があって、血糖が300以上の場合もしくはケトーシスのに陥っている場合
  • インスリンやインスリン分泌促進薬を使用している患者で、血糖が100未満であり、透析液に含まれている糖質が十分に血糖値を上昇させない場合、15gのブドウ糖を摂取させ20分後に血糖再検を行い、これを血糖値が100を超えるまで繰り返すことが推奨される

6. 安全のためのモニタリング

  • 運動に先立ち、体調について尋ね血圧および心拍数、そして糖尿病の場合は血糖値も記録し、そして運動中にこれらの症状をモニタリングを行う(疼痛、過剰な疲労感、自覚症状、過剰な運動になっていないか、チアノーゼ、不安、重度な息切れ、胸痛、めまいやたちくらみ等)
  • 高血圧症の場合、運動中も定期的に血圧測定をすることが推奨される(220/105を超えることがあれば、血圧が低下するまで運動強度を下げるか運動を休止する)
  • ボルグスケール等の自覚的運動強度スケールを使用し、15のきついを超えないよう確認する
  • 運動後、血圧と心拍数が安静時の値に戻るまで、少なくとも20分はモニタリングを続け、残りの透析中の血圧低下に注意を払うべき

7. まとめ

透析中運動療法は禁忌のないすべての透析患者に推奨され、その効果として身体機能だけではなくQOLや透析効率の改善も見込めることが理解できました。また、具体的な方法や禁忌、そしてモニタリング方法まで紹介されているのは心強いですね!

最後までご覧いただきありがとうございました!

youtubeでは動画も公開しておりますので、是非ご視聴ください!

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